美味しいロケ現場
映画に惹かれてフランスへ。
フルコースのロケご飯と魅力ある人間たち・・・
現場の人たち
DATE : 2007-08-24-Fri  Trackback 0  Comment 0
機材屋にいた頃から、映画照明の世界について笑い話ばかり聞かされていた。あの技師が怒って何を壊しただの、誰が誰を口説いただの、現場の逸話によって浮かび上がる照明技師のステレオタイプは、職人気質で好色な荒男。失敗すれば殴られる、罵倒される、そんな世界を想像し、変に緊張していたのだが、実際にドラマの撮影に入ってみると、全然違って驚いた。

まず、現場の人は非常に優しい。

笑顔が眩しい。

ぎりぎりと歯軋りしながら照明機材をぶんぶん振り回し、子分をぶん殴るのかと思っていたら、アラアラ、皆さん非常に優しいのには驚いた。撮影途中からの参加となった僕に、「あれ、君は何をしているの?」と声をかけるスタッフ。「こいつはわざわざ日本から来て、毎日毎日スタジオ前に来て頭を下げるもんだから、俺たちも受け入れざるを得なかったんだよ、ガハハ、皆よろしく」と僕を好意的に紹介してくれた。

CM撮影
食器洗い手袋MAPAのCM撮影1 ミニチュアです。


照明のチーフが僕に言った。

「何にしても、強く欲するというのは非常に大切なことだよ。」

僕が機材屋にいた頃は、現場周辺をうろうろする僕に、「お前、誰だ」といっていた助監督の人も、ここでは一変、「お前、よくやったね」と褒めてくれる始末。

仕事においても、「お前、機材屋にいたのにそんなことも知らねぇのか!」と怒鳴られることがないよう、少ない知識を精一杯役立てようと意気込んでいたが、「お前はまだ何も知らなくて当たり前だから、みんながどうやってるか見てればいいよ」と、優しい感じ。それどころか、「フフフ・・・要、スタッフの中で一番かわいい女性は誰?二番目は?ガハハ」といった感じで、爆笑の日々なのである。日本に興味がある人もたくさんいて、居心地いいことこの上ない。

CM撮影
食器洗い手袋MAPAのCM撮影2 人形遣いさんが手で出演。


仕事もサクサクとこなす彼ら、プロってすごいなぁ。しばらくしてお手伝いを出来るようになってきた。前述の通り、飯もウサギが出てきたりして美味しいし。あっという間に食いしん坊のレッテルを貼られる。楽しいなぁ撮影。嬉しいなぁ撮影ご飯。面白いなぁ毎日。

照明の光量を抑えるために、網状の黒布をかけることがあって、この布を「タルラッタン」というのだが、これをトラックから持って来いと頼まれた。チーフに渡す際、僕は聞き慣れない単語を思い出すことができず、T や L やらの印象もおぼろげに、

「はい、タルトレット!」

と絶叫してしまった。そしたら皆が大笑い。何でかなと思ったら、タルトレットというのは、僕がいつも昼ごはんの時にがつがつ食べている、小型のタルトのことだからであった。あの美味しいタルト、タルトレットって言うんだ。

このチームとは7ヶ月後にもう一度仕事をしたのだが、彼らの間では今も、あの布を「タルトレット」と呼んでいる。

page top
つまみ食いの祭壇
DATE : 2007-08-03-Fri  Trackback 1  Comment 2
スパーバス Superbus
フランスの若者に大人気のロックバンド SUPERBUSのPV撮影・その1

フランスの撮影現場には必ず、Table de regie というものがある。Regie とは、いわゆる「制作部」のこと。各パートの動きを把握し、それが円滑に行われるように配慮するポリバレントな人たちだ。そんな彼ら提供するスタッフのためのオアシスが、この制作部テーブルなのである。

経験も技術も知識もない上に、言葉まで不自由という僕が、とりあえず現場で心がけているのは、他の技術者より早く現場に到着しようということだ。時間だけは守れます、という事くらいしか、自慢できることがないから当然といえば当然である。フランス人といえば時間にルーズなので有名だが、これが映画となると話は別で、遅刻してくるのは監督くらい。集合の15分前には技術者の半分が揃っている。だから、彼らより早く入ろうとするのは大変である。
そうしていくら早く着いても、必ず一番に現場に入っているのが制作部の人たちだ。

スパーバス Superbus
フランスの若者に大人気のロックバンド SUPERBUSのPV撮影・その2

早朝。フランスの慣習通り、テーブルの上には焼きたてのクロワッサンとパン・オ・ショコラ。それに常備設置のエスプレッソ・マシン、各種のフルーツジュースにお茶、果物、駄菓子などなど。日によっては、フランス版高級ヤクルト、アクチメルまで並ぶ。昼食の後にはチョコレート、夕方にはサンドイッチと、手を変え品を変え、テーブルは一日中お祭りの賑わいである。

「映画を始めてコーヒーを飲むようになった」
「映画を始めてチョコレートが好きになった」

など、映画の現場を職業とする人たちへのテーブルの影響力は計り知れない。
食べても食べても次が出てくる。つまみ食いはいけない!としつけるのは古今東西変わらぬが、このテーブルを眺めていると、まるでつまみ食いを美徳とする宗教団体なのかと錯覚してしまうくらいだ。そういえばこのテーブルの整然には、どこか祭壇のような趣がある。


SUPERBUSのPV "Lola"

page top
Copyright © 2007 美味しいロケ現場 :: french-code blog. all rights reserved.