美味しいロケ現場
映画に惹かれてフランスへ。
フルコースのロケご飯と魅力ある人間たち・・・
映画とご飯と
DATE : 2007-06-27-Wed  Trackback 0  Comment 3
――クロード・シャブロルの撮影現場なんかだと、明るいうちに仕事を切り上げて、夜はご馳走を前にワインを飲むんだってね… 

日本で大学生をしていた頃、ある教授から聞いた話である。フランス。ご馳走とワインと。
pot
撮影の半ばに催された立食会

そうして2004年から映画専門学校の留学生として実際にこの国で暮らすことになったのだが、僕の毎日の献立は、冷凍ハンバーグとパスタが織り成す完璧な中1日ローテーション。美食の国と聞いてやってきたもの、食事は一向に美たる気配をみせないではないか。

なぜか。

理由は単純明快、これは男子学生の一人暮らしなのである。のみならず、スーパーに並んでいる食材が日本と全く違うため、せっかく体得してきた和食を作るのが非常に不便なのである。渡航目的そのものが美食の極意体得にあったなら話は別だが、映画の勉強という名目で遠路遥々遊びに来た自分の食卓は、文字通り悲惨な状況であった。

哀しき腹がぐううと鳴る。僕は独り、故国の納豆の香りを懐かしみ、母が持たせたソバツユをしくしくと舐めた。


そんな状況の中、映画専門学校に入学した。高卒間もない若者が過半数の200人、その中に留学生が5人という環境であった。慣れない外国語、若者言葉。知り合いに挨拶するのが面倒になるほど言葉に苦労したのを思い出す。

一学年目は映画の何たるかを基礎から詰め込まれるプログラムになっていて、技術系の授業はともかく、映画美学、脚本分析など概念的なキーワードを含む全ての講義は不可解の極み、ノートに展開された落書きは抽象アートの領域に達した。

そして学校のカフェテリアで食べるサンドイッチ、すごく不味くて。
でも安く食べるにはここしかなくて。

機材屋で研修中に撮った、機材の写真
機材屋で研修中に撮った機材

それから2年後、こんな僕にも転機が訪れる。学校の夏休みを利用した照明機材屋における研修中のことだ。隣接する撮影スタジオを目的なく徘徊し、道行く人に笑顔でボンジュールとやっているうち、映画技術者と知り合いになり、晴れて照明の研修生としてテレビドラマに加わることになった。プロの仕事を、目で見て、手足を動かして学ぶことができるようになった。

撮影そのものに感動したのはもちろんだが、そこで僕が驚愕したものの一つが食事であった。スタジオ脇に設置された白いテントの中で、手を変え品を変え振舞われるフランス郷土料理。冷凍ハンバーグは、肉汁滴るヒレ肉のステーキへと変貌を遂げた。焼き加減は「電子レンジ解凍300W」から「ミディアム」へ。目の前にある業界への入り口、そしてご馳走に、僕の胸は踊った。

無論、常にご馳走がでるわけではない。アタリもあればハズレもある。このエッセイは、僕が実際にフランスの撮影現場で体験「華麗な食卓」の真相を紹介しながら、現場で目にした綺譚に奇譚を綴らんとするものである。
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